PPRプラットフォーム技術とは

独自開発したRNA標的を担うPPRドメインと、塩基置換などRNAの制御を担うエフェクタードメインを組み合わせたRNA編集技術です。疾患の原因となるRNAに対して、多様な分子設計が可能であり、様々な創薬の課題を乗り越える新しいモダリティーです。
PPRプラットフォーム技術に関する研究発表についてはこちらをご覧ください。

PPRプラットフォーム技術

タンパク質ベースのRNA標的技術

01他とは異なるRNA標的方法

これまでの技術とはメカニズムが異なる独自のRNA結合タンパク質技術

植物でのRNA編集に関与しているPPR(PentatricoPeptide Repeat)タンパク質のRNAへの結合メカニズムを明らかにすることにより、任意の塩基配列に結合するタンパク質の設計と作製が可能となりました。

PPRプラットフォームの構造
PPRプラットフォームにおけるアミノ酸配列の組み合わせ

Yagi et al., PLoS One (2013)
・RNAに結合する人工蛋白質の設計及びその利用 [特許6164488;九州大学]

PPRタンパク質の性質

  • 35アミノ酸残基からなる1つの単位 (PPRモチーフ)が連続した構造
  • 1つのPPRモチーフがRNA上の1つの塩基と結合
  • PPRモチーフ内の3箇所のアミノ酸配列の組み合わせで結合する塩基が決定
  • 標的の塩基配列に対応したPPRモチーフをつなげることで、配列特異的に結合するタンパク質の設計・作製が可能

一塩基置換技術

02一塩基置換技術

独自の塩基置換酵素を用い、CからUもしくは UからCの一塩基置換が可能

PPRドメインに独自の塩基置換酵素ドメインを結合させることにより、CからUもしくは UからCの一塩基置換が可能となりました。この技術により、これまで標的とできなかったRNA変異の修復が可能です。

PPR技術による一塩基置換

多様な分子機能

03多様なRNA制御方法

エフェクタードメインの選択により、塩基置換以外にも様々なRNA制御分子の作製が可能

PPRドメインに組み合わせるエフェクタードメインを入れ替えることで、塩基置換以外にも様々なRNAへの作用が可能です。また、細胞内輸送シグナルを付加することで、細胞質だけではなく核内あるいはミトコンドリアのRNAを標的とすることができます。

翻訳活性化

翻訳活性化

PPRドメイン + 翻訳制御タンパク質ドメイン

RNAレベルで標的タンパク質の翻訳能を向上させる技術
  • 補充療法ではカバーできないタンパク質にも応用可能

スプライシング制御

スプライシング制御

PPRドメイン + スプライシング制御タンパク質ドメイン

スプライシングバリアントを制御する技術
  • エクソン単位で変異の除去が可能

RNA切断

RNA切断

PPRドメイン + RNA切断酵素ドメイン

標的RNAを切断する技術
  • 病気の原因となるRNAの除去が可能

RNAブロッキング

RNAブロッキング

PPRドメインのみ

標的RNAに結合することで他のRNA結合タンパク質をブロックする技術
  • 標的RNAの代謝や機能などの制御が可能

シンプルな分子

04シンプルな分子

タンパク質1分子の構造であるため、様々なDDSを選択可能

PPRプラットフォーム技術では、標的RNAとの結合と塩基置換などのRNA制御を1つのタンパク質分子(PPRシステム)で実現することができます。そのため、PPRシステムを遺伝子として投与する場合、PPRシステムの発現に必要な遺伝子配列が短く、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのさまざまなDDS(薬物送達システム;Drug Delivery System)を使用できます。

PPRシステムの構造
疾患領域に応じて戦略的に様々なDDSを選択

ゲノム編集への応用

PPRプラットフォーム技術は、DNAを標的として配列特異的に結合するタンパク質分子を作製することも可能です。
RNA編集に限らず、ゲノム編集技術としての応用可能性も備えています。